【医師監修】産み分けコラム COLUMNS
【医師監修】男性不妊の原因である無精子症とは?原因や治療方法
精液検査をして精子が確認できなかった場合、「無精子症」に当てはまります。
妊娠とは、精子と卵子が結びつくこと。パートナーが当てはまる場合、「治療法はあるの?」「妊娠できるの?」と不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、無精子症の概要や原因、治療方法などを解説します。
男性不妊の原因である無精子症について

男性不妊の原因の一つである、無精子症。まずは、概要を見ていきましょう。
無精子症とは
文字通り「精液中に精子が含まれていない状態」を指します。
通常、一回の射精で放出された精液の中には、約1~3億個の精子が含まれています。ですが、精液の中に全く精子が含まれていない男性も一定の割合で存在しており、その方を「無精子症」と診断します。
また、男性で不妊傾向のある方の10人に1人は無精子症という調査結果もあります。男性不妊の大きな原因の一つといえるのです。
精子が射精される仕組みって?
そもそも精子とはどのように作られ、体外に放出されているのでしょうか?無精子症について理解するため、まずは射精の仕組みをおさらいしましょう。
精子は、陰嚢の中の精巣で約70日間かけて生産されます。その後は、精巣上体と呼ばれる部位に移動して射精まで待機。射精されなかった精子は体内に吸収されます。
性的興奮や刺激により射精の準備が整うと、精子は「精管」から「射精菅」を通り、最後に尿道を経て体外へ放出されるのです。精子が移動する途中で、前立腺液や精嚢の分泌液と混ざって精液になります。割合で見ると、精液中の約1~2%が精子で、残りが全て前立腺や精嚢の分泌液です。
このようなプロセスと経て、精子は体外へ移動します。しかし、この過程でなんらかの機能に問題があると、体外へ放出されない原因に繋がってくるのです。
無精子症の判定方法
正しい判定には、数回精液検査を受けることが大切です。なぜなら、男性の精液のコンディションは日によって違うからです。
体調やストレスの有無、環境の変化が原因で精液や精子の状態が変わることがあります。そのため、1回の検査で見当たらなくても、もう一度検査をすると精子が発見される可能性も考えられるのです。
精液検査で精子が見当たらなかった場合、一定期間空けてから再度検査を受けて判定しましょう。
なぜ精子がいない?無精子症の原因
「自覚症状がないけど、どのくらいの男性が無精子症なの?」「通常の射精ができるのに、なぜ1匹もいない状態なの?」と不妊の問題を抱えるご夫婦は、疑問や不安に思う方も多くいらっしゃることでしょう。
原因をくわしく見ていきましょう。
どのくらいの人が無精子症?一般的な割合
一般男性の100人に1人は無精子症だといわれています。先述したように、男性不妊である方の中では10人に1人の割合です。
決して少なくない割合のため、身近な男性不妊の要因の一つだといえます。
なぜ無精子症に?2つの原因
原因は大きく分けて2つあります。自覚症状がないため精液検査にて発覚し、下記の要因が発見されます。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
【閉塞性無精子症】
精管や射精菅など、精子の通り道がどこかで閉じている状態で、無精子症の約2割を占めています。
精巣では、精子は正常に作られています。原因として、子どもの頃のヘルニア手術、精巣上体での炎症、外傷によるものなどがありますが、原因不明なことも。
【非閉塞性無精子症】
精子の通り道は正常ですが、精巣内でなんらかの障害が起きており精子が生産されていない状態です。原因は精索静脈瘤や染色体の異常などさまざまですが、原因不明のことも。無精子症の約8割を占めています。
無精子症の治療方法や今後の選択肢

パートナーが無精子症であった場合、「どうしたら治療できるの?」「妊娠は可能なの?」と不安に感じるものです。
治療方法や今後の選択肢を解説します。
無精子症は妊娠可能?
妊活していると、一番気になる問題。結論として、治療により精子が採取できれば妊娠の可能性はあります。卵子に問題がなく、健康な精子が採取できれば顕微授精や体外受精などで受精できる可能性はあります。
ただし、原因によっては精子が採取できないことも。正しい治療をし、専門医に相談することが必要です。
原因別でおこなう治療方法
原因別に治療方法を紹介します。流れを知っておくだけでも、不安は和らぐものです。およその流れを理解し、詳細は専門医に相談しましょう。
【閉塞性無精子症の治療】
精子の通り道がふさがっていることが大きな要因のため、原因となっている部分を手術して、通り道を開通する治療法があります(精路再建手術)。
原因により、管を接続したり一部切り取ったりして改善を図ります。
・通り道が問題なく開通した場合:通常のSEXにより妊娠が可能です。
・通り道が開通できなかった場合:精巣精子採取術(Conventional TESE)にて精巣より直接精子を採取する手術をします。精巣で精子は作られているため、短い時間・高い精度で精子を採取できます。
【非閉塞性無精子症の治療】
精巣から元気な精子を探して採取する治療をします。精巣内を顕微鏡にて詳細に調べて精子を抽出する、精巣精子採取術(micro TESE)をおこないます。手術は1時間以上かかります。採取率は約3割で、必ずしも採取できるとは限りません。
精子が採取できなかったときも想定しておく
先述した治療方法がありますが、ベストな治療を施しても、精子が採取できない可能性や妊娠できないケースもあります。そのため、妊娠できなかったときの決断や選択も、パートナーとよく話し合っておきましょう。
参考に、選択肢を3つ紹介します。
・特別養子縁組制度を利用して子どもを持つ
どうしても子どもを持ちたい場合、養子を取り、子どもを育てる選択があります。実の親として法的に親子関係になり、養子となる子どもとその実親との関係は法的に解消される制度です。原則として15歳未満の子どもを迎え入れることができます。
・非配偶者間人工授精(AID)にて妊娠を図る
どうしても妊娠して子どもが欲しい場合、パートナー以外の精子にて妊娠を図る、非配偶者間人工授精という方法があります。精子ドナーの精液を利用し、人工授精にて妊娠を図る方法です。
・子どもを持たない生活を受け入れる
自分とパートナーの子どもが欲しいがどうしても得られない場合、子どもがいない生活を受け入れるという選択です。ご夫婦2人で生活するメリットにも前向きに目を向け、穏やかに過ごす道もあります。
まとめ

無精子症の概要や原因、治療方法を解説しました。
男性不妊の方のうち、10人に1人は無精子症といわれています。いくらタイミングを見計らってSEXしても、精子が存在しない限りは妊娠の可能性はありません。
男性で不妊傾向にある方は、まずは数回の精液検査で原因を特定することが大切。正しく治療することが妊娠への近道です。治療により、精子が抽出できれば妊娠の可能性はあります。諦めずに男性にも積極的に協力してもらい、妊娠の可能性を高めましょう。
また、精子が採取できない可能性も視野に入れ、パートナーとよく話し合うことも重要です。お互いが納得できる選択をしましょう。
株式会社ChromoS(クロモス)では精子検査のみでおこなえる男女産み分け法、MicroSort「マイクロソート」のサービスを展開しているほか、一般の方向けの精液検査も提供しています。ご自身の精子の質を確認してみたいという方がお気軽に検査を受けられる環境を整えています。
弊社の提供する産み分けに関するサービスに興味がある方は、以下より資料請求が可能です。

監修

中林稔
産婦人科医 / 三楽病院産婦人科
日本医科大学卒業。東京大学医学部附属病院で研修後、三井記念病院医長、虎の門病院医長、愛育病院医長を経て、現在三楽病院産婦人科部長。毎日出産や手術に立ち会う傍ら、各地で講演を行い医学的知識や技術の普及に力を入れている。また、少子化及び産婦人科医師不足問題にも積極的に取り組み、教育においても若手医師の育成をはじめ助産師学院の設立等、幅広く活動を行っている。
関連コラム
-
産み分け 【医師監修】もしかして夫は男性不妊?原因を調べる精子検査とは
不妊治療を続けてもなかなか授からない場合、不安や焦りが募るものです。子宮や排卵など女性に異常がない場合「なぜ授からないの?」と不思議に思いがち。ですが、不妊の約半数は男性側に原因がある「男性不妊」とい…
-
産み分け 【医師監修】不妊治療の助成はこれから大きく変わる?現状と今後の助成について解説
不妊治療は保険適用外なので高額なお金のかかる治療です。そのため、助成制度があり、多くの方がこの助成を活用しています。実はこの助成が今後変わろうとしているのはご存知でしょうか? 不妊治療の助成の現状と今…
-
産み分け 【医師監修】性感染症とは?妊活前に性感染症の検査をするべき理由
妊娠を希望し、いよいよ妊活を開始しようとする際に、性感染症(性病)の検査をしたほうがいいと聞いたり、すすめられたりしたことはありませんか? 違和感や症状がないことから「検査なんて必要性ない」と思われる…
-
産み分け 【医師監修】妊娠には精子の質が重要!妊活力を高める男性の生活習慣と方法
赤ちゃんは授かりもの。「妊活をしているけどなかなか授からない……」と悩む女性も多いです。そんなとき「自分の体質や卵子に問題があるの?」と不安になる女性もいらっしゃるのではないでしょうか? 実は妊娠の成…