【医師監修】産み分けコラム COLUMNS
【医師監修】精液検査(男性不妊検査)では何が分かる?検査項目や治療法について解説
タイミングをとってもなかなか妊娠しない場合、不安や焦りを感じるもの。
「何か自分に原因があるのでは?」
と考えがちですが、実は男性側に不妊の原因が潜んでいることもあります。
そんなとき、精子の状態を調べる精液検査を検討する方もいらっしゃることでしょう。
とはいえ、概要がよく分からないと「どんな項目を調べるの?」「検査後はどう不妊治療に活かせるの?」と疑問に感じるものです。
そこで本記事では、精液検査について解説します。
精液検査(男性不妊検査)とは

精液検査とはどんな検査なのでしょうか?検査の意味を知るにあたり、まずは基本的な不妊の原因や妊娠に必要な精子について見ていきましょう。
男性不妊の割合と検査のタイミング
一般的に、タイミングを取って1年ほど妊活しても授からない場合は「不妊症」と定義されます。女性だけでなく、実は男性が原因である場合も少なくありません。
1998年の世界保健機関(WHO)の不妊調査では、男性側に原因がある割合は約24%、男女両方に原因がある割合も約24%と発表しています。つまり、不妊の約半数は男性側に問題があるといえるのです。
女性側が正常に排卵されていたり、子宮の状態に異常がなかったりする場合、精液検査を視野に入れるとよいでしょう。授からない期間が長くなると、心身ともに負担が大きくなるもの。男性も協力して早めに検査をおこなうことで、今後の効果的な治療の方向性や対策が考えられます。
妊娠のカギは質のよい精子
妊娠に重要なのは、タイミングを取ってSEXすることに加えて「質のよい精子が子宮内に放出されていること」です。
質のよい精子の条件とは、
・数が多い
・運動量が多い
・形が良く、染色体も正常
などです。1回の射精で放出される精子の数は約1億~3億個ですが、子宮内で約9割が死滅します。残り1割の生き残った精子が無事に卵子にたどり着き、受精後も正常に妊娠が継続されるためには、上記の項目を満たす質のよい精子が存在しているか?が重要です。
精子の状態を調べる精液検査とは
精液検査とは、「射精した精液の中に妊娠可能な精子が存在しているか?」を調べる検査です。質のよい精子の有無を知ることで不妊の原因の仮説が立てられるため、早めに対策が立てられます。
一般的な流れは、男性が数日射精を禁欲してマスターベーションにて射精後、約30分~1時間以内に検査します。その日のうちに検査結果が分かることが多いです。また、精子の状態は日によってさまざま。よって検査は1回だけでなく、日を置いて再検査するとよいとされています。
精液検査(男性不妊検査)の項目や手順・費用
精液検査では具体的に何が分かるのでしょうか?検討される場合、検査項目や費用は気になるものです。
詳細を見ていきましょう。
精液検査で調べる項目は?
精液検査とは、「妊娠に有利な質のよい精子かどうか?」を調べる検査です。質を測る指標として以下の検査項目があります。
【一般的な検査項目】
・精液の量:射精された精液自体の量
・数や濃度:精液の中に含まれる精子の数や割合
・運動量:動いている精子の割合や前進しているかどうか
・形状:奇形精子の数や割合
上記の項目をふまえて専門医が総合的に判定し、妊娠に有利な精子がどのくらい含まれているかを見ていきます。
どこで受診?精液検査が実施できる場所
検査はどこで受診できるのでしょうか?
一般的には以下の医療機関で受診できます。
・婦人科
・泌尿器科
・不妊専用の機関やクリニック
などです。
婦人科や泌尿器科などがオーソドックスですが、最近では不妊専用外来や機関もあります。パートナーが通っている婦人科で相談したり、地域名で検索して機関に問い合わせたりして決めるとよいでしょう。
また最近では、自宅で精液を採取後、郵送して検査できる機関や精子を自分でチェックできる検査キットを提供している機関もあります。
精液検査の一般的な費用
検査の費用は機関によってさまざまですが、一般的には1回約5,000円~10,000円(保険適用外)でおこなわれています。
医療機関により提示している料金メニューは違うため、各医療機関に問い合わせましょう。
精液検査(男性不妊検査)を活かした治療法

検査を検討する中で、「もし良くない結果が出たら不安だ」「検査した後は、どんな治療ができるの?」と思う方もいるでしょう。
検査を早めにおこなうメリットや、検査後の具体的な治療の種類を解説します。
早めに精液検査をおこなうメリット
結論として、「不妊かな?」と感じたらなるべく早く検査を受診するとよいです。なぜなら、検査結果をふまえて今後の対策や負担の少ない治療を早くに選択できるからです。
不妊治療は女性側に心身とも大きな負担があります。ですが、もし先に精子に改善の余地があると分かった場合、人工授精、体外受精と女性の負担が大きい治療へ先に進むことを防ぐことができます。
不妊治療は女性だけの問題ではありません。パートナーにも積極的に協力してもらいましょう。
精子の状態別でおこなう治療の種類
検査をして精子の状態が良くなかった場合は、どのような治療ができるのでしょうか?
結論として、精子の数が少ない、質が悪いなどは原因不明のことが多いです。ですが、検査によって原因といえる疾患が見つかるケースもあります。
参考に、一般的な治療方法をまとめました。
【精索静脈瘤】
実は、精子の質が悪い男性の約3割は精索静脈瘤を患っているという結果があります。
精索静脈瘤とは、陰嚢の静脈が拡張してコブができている状態です。コブによって陰嚢内の温度が上がり、精子の質が下がる原因になると考えられています。そのため、精索静脈瘤の手術治療をして精子の改善を図ります。
【無精子症】
文字通り精液の中に精子がない状態です。おもに以下の2つの症状に分類されます。
・閉塞性無精子症:精子の通り道がふさがれており、精液に含まれない疾患。
・非閉塞性無精子症:精巣で精子が生産されていない疾患。
手術治療によって疾患の改善を図り、精子を採取する取り組みをおこないます。
【乏精子症】
精子の数が少ない状態です。精索静脈瘤が原因の場合は、精索静脈瘤の治療をおこないます。または、漢方やホルモン療法などで精子の改善をおこなったり、健康な精子のみを採取し、人工授精や体外受精をおこなったりすることにより妊娠へと取り組みを図ります。
具体的な治療については、精子の状態や疾患の程度によるため、医師の判断です。基本的には、検査結果に基づいて医師の指示のもと治療をおこないます。
心身の健康を意識した生活習慣も重要
検査をしても原因不明であるケースは多くあります。その場合、生活習慣や食生活の改善により、精子の質を高めることも可能です。
・ストレスを溜めない生活を心がける
・栄養バランスのよい食事を摂る
・生活習慣を整える
・飲酒や喫煙を控える
・陰部付近を温めないようにする(サウナ、風通しの悪い下着を控えるなど)
などの取り組みをおこなうことで、質が向上するケースがあります。治療と並行して、心身とも健康な生活を積極的にしましょう。
まとめ

本記事では、精液検査をテーマに概要や治療方法などを解説しました。
妊娠には、女性だけでなく男性の理解や協力も不可欠です。「不妊傾向があるかも……」と感じた方は、早めに検査を受けるとよいでしょう。質のよい精子が生産できると、妊娠率もアップし、今後の選択肢も広がります。
株式会社ChromoSでも精液検査を提供しています。オフィスビル内にある検査所での検査のため、産婦人科や泌尿器科の受診に抵抗がある方にもおすすめです。
自然妊娠を活かした産み分けに興味がある方は、以下より弊社のサービスの資料請求ができます。

監修

中林稔
産婦人科医 / 三楽病院産婦人科
日本医科大学卒業。東京大学医学部附属病院で研修後、三井記念病院医長、虎の門病院医長、愛育病院医長を経て、現在三楽病院産婦人科部長。毎日出産や手術に立ち会う傍ら、各地で講演を行い医学的知識や技術の普及に力を入れている。また、少子化及び産婦人科医師不足問題にも積極的に取り組み、教育においても若手医師の育成をはじめ助産師学院の設立等、幅広く活動を行っている。
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