【医師監修】産み分けコラム COLUMNS
【医師監修】痩せすぎも肥満も要注意!不妊と体重の関係と管理の必要性とは
一見関係ないようにも思える体重ですが、実は不妊とおおいに関わりがあることをご存知でしょうか。痩せすぎも肥満も不妊に密接に関係しています。今回は、不妊と体重の関係、そして体重管理の必要性について解説します。
痩せすぎが不妊に及ぼす影響とは

痩せすぎとは日本肥満学会が定めた基準によると、BMI18.5%未満のことを指します。BMIがこの値以下となる、いわゆる痩せすぎが不妊症にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
急激な体重減少はホルモンバランスに影響を及ぼす
痩せすぎていると、ホルモンバランスに影響を及ぼして不妊に関係します。
また、過度なダイエットにより体重が急激に減少することもホルモンバランスに悪影響を及ぼします。特に体重が5kg以上あるいは10%以上の減少が見られると、無月経となってしまう場合があります。
また体重だけでなく、体脂肪率も関係しており、体脂肪率が17%以下になっても無月経となることがあります。
不妊症の理由の1つともなる無月経。無月経の30~40%がダイエットによる体重減少であると考えられており、体重減少は不妊症に大きな影響をもたらすといえるのです。
なぜ痩せている女性が不妊になるの?
なぜ痩せている女性が不妊になりやすいのか、その理由は2つあります。
1つ目は脂肪が少ないことにより女性ホルモンが分泌されにくくなるからです。女性ホルモンの1つであるエストロゲンは、脂肪細胞から生成されます。痩せている方はこの脂肪細胞が少ないので、エストロゲンが分泌される量も少なく、結果として不妊になりやすくなると考えられているのです。
2つ目は栄養の観点からです。標準体重よりも体重が少ないということは栄養状態も悪いことが考えられます。特に若い女性は痩せ願望があり、食事量をあえて減らしている方も多く、栄養状態が悪くなっている方も少なくありません。
身体は栄養状態が悪くなると、生命活動へ影響がないところから機能を停止させていくと考えられています。妊娠の機能からまず低下させるのではないかといわれているのです。
痩せている女性はどのくらい不妊になりやすいの?
痩せている女性が不妊になるリスクは、標準体重からどのくらい体重が減少しているのかから算出します。標準体重の85%以下となると不妊になるリスクは4.7倍高くなることが分かっています。
肥満が不妊に及ぼす影響とは
肥満とは、日本肥満学会が定めた基準によるとBMI25以上を指します。BMIがこの値以上となるいわゆる肥満が不妊症にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
肥満の63%に月経異常や排卵障害が起こる
肥満の63%の方に無月経、稀発月経、過少月経といった月経異常が起こることが分かっています。他にも排卵障害も肥満の方に多いです。
肥満の女性に月経異常や排卵障害が起こる理由は2つあります。
1つは、先ほどの痩せている女性のところでお伝えしたものと逆の現象によるものです。脂肪細胞が多いことによって女性ホルモンがたくさん産生されてしまいます。そうするとエストロゲンが過剰な状態となるためホルモンバランスが乱れ、月経異常や排卵障害が起こると考えられているのです。
もう1つは男性ホルモンの分泌によるものです。全ての女性は微量ながら男性ホルモンが分泌されています。女性の肥満は血中のインスリンが高まり男性ホルモンの分泌を増やしてしまうことが分かっています。男性ホルモンの分泌量が異常となることで、女性ホルモンとのバランスが崩れ、月経異常となってしまうのです。
肥満女性に多い不妊の原因、PCOSって?
肥満女性の不妊の原因にPCOSがあります。PCOSとは多嚢胞性卵巣症候群のことで、生殖年齢の女性の4~11%に見られるとされている病気です。
多嚢胞性卵巣症候群は内分泌系の病気のため、さまざまな原因が考えられているのですが、その1つが肥満です。肥満により男性ホルモンの分泌量が増えることでリスクが高まるのです。
肥満の女性はどのくらい不妊になりやすいの?
肥満の女性が不妊になるリスクは、標準体重からどのくらい体重が増加しているのかによって算出できます。標準体重の120%以上増えている状態となると、不妊になるリスクは2.1倍高くなることが分かっています。
痩せている人と比べてリスクは低いと思われるかもしれませんが、ホルモンバランスの異常の改善には時間がかかりますし、PCOSとなってしまったら不妊治療を受けなければ妊娠をすることは難しくなります。
不妊治療は時間もお金もかかります。負担を軽減できるようにまずは、体重管理をしていくことが妊娠への近道になるといえるのです。
体重管理ができれば不妊は改善できる?

体重管理をしていくことで不妊の改善をすることができるのかどうかについて解説していきます。
体重管理をすることでまずはホルモンバランスを整えられる
これまでお話ししてきたように、体重が多くても少なくてもホルモンバランスに影響を及ぼしてしまいます。妊娠を成立させるためにはホルモンバランスを整えて排卵をさせ、さらに受精卵が着床できるように環境を整えることが必要です。
まずは、体重を管理してホルモンバランスを整え、妊娠しやすい体を作りましょう。
特に肥満においては無排卵、卵子の質の低下、卵胞の異常発生、および子宮内膜受容能の変化など不妊において複雑なメカニズムが潜んでいます。
日本産科婦人科学会では、挙児希望のあるBMI>25kg/m2の女性に対して、2〜6ヶ月間で5〜10kgの減量を推奨しています。
とはいえ、急激に体重を減らすあるいは増加させることもホルモンバランスに影響するため、無理なく、徐々に体重をコントロールをしていくことが望ましいといえるでしょう。
体重管理をする際に気をつけたいのが食生活
痩せている場合でも肥満の場合でも適正体重でないとなると、生活習慣病の原因にもなりかねません。体重管理をしていくのに最も気をつけていただきたいのが食生活です。
体重を増やしたいからといって高カロリーの食事ばかり取り続ける、体重を減らしたいからと必要な栄養を取らないと、体重がコントロールできてもリバウンドの原因になったり、妊娠するための力が低下したりします。
ですので、バランスの良い食事を摂りながら体重をコントロールしていくことを意識しましょう。
特にたんぱく質、ビタミンA,B,E、鉄、亜鉛、カルシウム、コレステロールは妊娠に必要な栄養素となるので積極的に摂っていきたいものです。
体重管理をして健康的に不妊の改善を

体重という数値のみに着目して一喜一憂していては、ストレスもたまり、不妊に影響する可能性が高くなっていきます。また、妊孕性だけでなく健康状態も整えていきたいものです。そのため、無理なく健康的に体重をコントロールして不妊の改善を目指しましょう。
産婦人科でも、不妊治療の一環として体重コントロールをおこなってくれます。
自分だけで体重をコントロールするのは難しいと考える方は、かかりつけの産婦人科などに相談されるのもよいでしょう。
不妊の理由に体重が関係しているかもしれないと考える方は、一度、産婦人科など専門家も頼ってみてはいかがでしょうか。

監修

山内香里
産婦人科医 / 栄エンゼルクリニック
三重大学医学部医学科卒業。市立四日市病院にて初期研修後、同院にて産婦人科勤務。
現在栄エンゼルクリニックにて産婦人科診療を行う。産婦人科専門医、日本女性医学会会員。
関連コラム
-
産み分け 【医師監修】もしかして夫は男性不妊?原因を調べる精子検査とは
不妊治療を続けてもなかなか授からない場合、不安や焦りが募るものです。子宮や排卵など女性に異常がない場合「なぜ授からないの?」と不思議に思いがち。ですが、不妊の約半数は男性側に原因がある「男性不妊」とい…
-
産み分け 【医師監修】不妊治療の助成はこれから大きく変わる?現状と今後の助成について解説
不妊治療は保険適用外なので高額なお金のかかる治療です。そのため、助成制度があり、多くの方がこの助成を活用しています。実はこの助成が今後変わろうとしているのはご存知でしょうか? 不妊治療の助成の現状と今…
-
産み分け 【医師監修】性感染症とは?妊活前に性感染症の検査をするべき理由
妊娠を希望し、いよいよ妊活を開始しようとする際に、性感染症(性病)の検査をしたほうがいいと聞いたり、すすめられたりしたことはありませんか? 違和感や症状がないことから「検査なんて必要性ない」と思われる…
-
産み分け 【医師監修】妊娠には精子の質が重要!妊活力を高める男性の生活習慣と方法
赤ちゃんは授かりもの。「妊活をしているけどなかなか授からない……」と悩む女性も多いです。そんなとき「自分の体質や卵子に問題があるの?」と不安になる女性もいらっしゃるのではないでしょうか? 実は妊娠の成…