【医師監修】産み分けコラム COLUMNS
【医師監修】フーナーテストはなぜ行う?検査方法や結果による治療法を解説
妊活を始めた際に、検査の一環として行うことがあるフーナーテスト。聞きなれない検査名ですが、不妊かどうかを知る上で非常に重要であるといえます。
今回は、このフーナーテストに着目し、検査の方法や結果、また治療が必要となった場合の治療法について詳しく解説していきます。
まずはフーナーテストについて知ろう!

まずはフーナーテストがどのような検査なのか、その基礎的なところを知っていきましょう。
フーナーテストってどんな検査?
フーナーテストとは、性交後に女性の膣内で射精された精子がどのような動きをし頸管粘液を通過して膣から先に通過できているのかどうかを知るための検査です。
フーナーテストという呼び方以外にも精子―頸管粘液適合試験、あるいは性交後試験と呼ばれることもあります。
なぜ、フーナーテストを行うの?
フーナーテストを行う目的は精子が妊娠の可能性を高めるくらい十分な量、射精されているのか、また自力で卵管膨大部までたどり着けるほどの運動力があるのかを知るためです。
精子が子宮内で死滅する前に素早く卵管膨大部まで進んでいけるのか、妊娠するために十分な量の精子が放出されているかの検査を行うことで、自然妊娠ができるか否かを確認していくのです。
頸管粘液は女性の月経周期のうちエストロゲンが優位となるタイミング、すなわち排卵前に分泌量が増え、精子が通過しやすい質に変化します。
そのため、多くの場合は排卵日にあたるタイミングでフーナーテストを行います。
フーナーテストって100%正確なの?
残念ながら、フーナーテストは100%正確に、精子の動きや通過する力を見ることができるものではありません。フーナーテストは約100年も前から臨床で行われている歴史のある検査方法ですが、それだけの歴史があっても、検査法・判定法の標準化の難しさが指摘され、否定的な意見もあるのです。
またさきほど、頸管粘液を分泌するタイミングについてお話ししましたが、すべての女性が同じタイミングで一定して起こっている現象ではありません。なかには月経周期のうち、精子の通過性が陽性となるのが1〜2日しかないという方もいらっしゃいます。さらに同じ女性であってもその周期の体調やホルモンバランスの乱れなどによって頸管粘液の質が左右されることがあります。
ですので、1度フーナーテストの結果が悪かったとしても、後でもう一度検査をしたら結果が良かったなんていうこともあるのです。
そのため、フーナーテストは1回の結果のみを重視するものではなく2~3回繰り返し行って経過を見ていくことが多いです。
フーナーテストの方法とは?
それでは、フーナーテストはどのように行い、結果によってどのような治療を行っていくのかについて解説していきます。
フーナーテストはどのように行うの?
フーナーテストは、頸管粘液の分泌量が増えてきたタイミングで行うため、排卵日に実施されることが多いです。そのため、月経開始日から3日ほどのタイミングから産婦人科の受診を開始し、ホルモン検査と超音波検査を繰り返していきながらまずは排卵日を予測していきます。排卵日が決定したら、その排卵日がフーナーテストの日となるためテストの前日に性交を実施します。
フーナーテストの当日は、産婦人科に来院していただき、膣内に膣鏡と呼ばれる検査器具を挿入します。そのあと、子宮内に溜まっている貯留液を採取して検査を行います。
実は精子そのものは、膣内に射精された後、子宮内ではあまり長く生きていくことができません。なので、生き残っている精子を取り出すことができればその精子の運動能力や、動き方などを調べることができます。
また、死滅した精子を採取してもその精子の性質を調べることによって今回射精された精子の運動性や、量はどのようなものだったのかという情報も調べられるのです。
全ての利用機関でできるというわけではありませんが、フーナーテストの結果が女性側と男性側どちらに原因があったのかを細かく調べる検査もあります。
検査対象が女性の場合は男性のドナーの精子、男性が検査対象の場合は女性のドナーの頸管粘液を用いてテストを行い、判別をすることが可能です。
フーナーテストをするうえで注意しておくことは?
フーナーテストを受けるうえでいくつか注意しておくべき点があります。
まず、フーナーテストは正確な精子の量や運動量を調べることが目的です。そのため、医師に性交を指示される前に性交をする、いわゆるフライングでの性行為は禁止です。フーナーテストのための推奨禁欲期間は3日以上7日以内といわれていますが、日本産科婦人科学会では少なくとも、検査前2日間は禁欲を推奨しています。
次に性交時に、挿入のため潤滑剤を使用してしまうと検査の結果に影響が出てきてしまうため、潤滑剤の使用も禁止されています。
最後に、性交後は、シャワー浴は可能であるものの入浴は禁止とされています。
また、フーナーテストは射精をされてから9〜24時間後の精子を採取して検査をします。
フーナーテストの前日に性行為ができないからといって、当日の朝あるいは2日前の夜に性行為をしてしまっては正しい結果が得られないので注意しましょう。
フーナーテストの結果によって、どのような治療をするの?

前述したように、1〜2回フーナーテストの結果が悪かったという場合にはたまたま、女性あるいは男性側の体調不良であったりホルモンバランスが乱れていたりした場合もあります。まずは最低限でも3回程度は検査を受けましょう。
そのうえで結果が不良だった場合には治療が必要となります。
女性側の原因と治療方法
女性側がフーナーテストで結果が不良だった場合の理由として考えられるのは2点です。
1つ目は頸管粘液の分泌量が少ないという点。詳しい理由については不明な点が多いものの、ストレスや体調不良などの体調が関係していることが考えられます。また、子宮頚部から頸管粘液は分泌されるので子宮頸部を手術した経験がある場合にも、頸管粘液は少ないことがあります。
2つ目は抗精子抗体の存在です。女性の身体に精子が入ってきた時に、女性側の身体が精子を「異物」ととらえて、攻撃をしてしまうものです。射精をしたタイミングでは精子の運動量や質、量は充分なのに、この抗精子抗体によって精子の運動能力や質が低下し、卵管膨大部までたどり着けない、受精能力が失われてしまうのです。
頸管粘液の分泌量が少ないということだけが原因の場合には、女性ホルモンを薬で補充したり、潤滑剤などを活用したりして治療をすることで、自然妊娠の可能性もあります。
しかし抗精子抗体が理由であると判断された場合には精子抗体を改善させるための治療が確立されていないため、自然妊娠は非常に難しく、体外受精の適応となります。
男性側の原因と治療方法
男性側がフーナーテストで結果が不良だった場合は、やはり精子の異常が最も大きな原因です。
精子は生活習慣の乱れやストレスなどを改善するだけでも、改善される可能性があります。
また、射精精子のDNA損傷を起こす可能性のある精索静脈瘤という病気が見つかった場合には、これを治療するだけでも精子の質が改善される可能性があります。
しかし、どのような治療や生活習慣の見直しをしても改善が見込めなかった場合には、自然妊娠が難しくなり、人工授精や体外受精の対象となります。
フーナーテストの結果が悪かった場合はMicroSort「マイクロソート」が使えない?
株式会社ChromoS(クロモス)が提供しているMicroSort「マイクロソート」は、産み分けを目的としたサービスとなります。専門機関で、精子を分類し希望する性別の子どもができる可能性の高い精子のみをお返しし、その精子をご自身で排卵日のタイミングに合わせて膣内に注入していただきます。
つまり、一旦体外に精子は出すものの、注入の過程は自然妊娠の際と同じです。なので、フーナーテストをし、女性側が原因と考えられる場合は、精子が子宮頚管を通過して子宮内そして卵管膨大部にまで到達することが難しくなることが懸念されるため、MicroSort「マイクロソート」をご利用いただくことはできません。
まとめ

フーナーテストは1度の検査のみで結果が出るものではありません。1回の検査に一喜一憂されずに、まずは繰り返し受けてみましょう。
そのうえで、医師から診断された結果から、次の治療方法あるいは今後の妊活について考えてみてはいかがでしょうか。
また、フーナーテストは事前に検査などをすることはなく、そして身体への負担が少なくどなたでも受けることができるので、MicroSort「マイクロソート」を検討してているが、通過障害があるかどうかが不安という方は、医療機関にて、フーナーテストを受けることをおすすめします。

監修

中林稔
産婦人科医 / 三楽病院産婦人科
日本医科大学卒業。東京大学医学部附属病院で研修後、三井記念病院医長、虎の門病院医長、愛育病院医長を経て、現在三楽病院産婦人科部長。毎日出産や手術に立ち会う傍ら、各地で講演を行い医学的知識や技術の普及に力を入れている。また、少子化及び産婦人科医師不足問題にも積極的に取り組み、教育においても若手医師の育成をはじめ助産師学院の設立等、幅広く活動を行っている。
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