【医師監修】産み分けコラム COLUMNS
【医師監修】不妊治療の助成はこれから大きく変わる?現状と今後の助成について解説
不妊治療は保険適用外なので高額なお金のかかる治療です。そのため、助成制度があり、多くの方がこの助成を活用しています。実はこの助成が今後変わろうとしているのはご存知でしょうか?
不妊治療の助成の現状と今後についてまとめました。
現状の不妊治療の助成は?

まずは、不妊治療の助成の現状についてまとめました。
保険適用の治療と適用外の治療は?
不妊治療と一言で言っても、いくつかステップがあります。
不妊治療としてまず最初に行われるのが、自分及びパートナーに不妊の原因となる病気などがないかといった検査です。
この検査がクリアされ、次に行うのがタイミング療法と呼ばれるものです。医療機関で経膣エコーや採血を活用しながら排卵日を予測し、その排卵日のタイミングに合わせて性行為を行うというものです。この治療までが保険適用となる治療です。
保険適用外となる治療はここからステップアップしていった治療で、人工授精、体外受精、顕微授精となります。
なぜ、これらの治療に保険が適用されないのかというと、その理由は法律にあります。療養担当規則第18条に「保険医は、特殊な療法又は新しい療法 については、厚生大臣の定めるもののほか行ってはならない」と記されています。
つまり、人工授精や体外受精、顕微授精はまだ実験的治療という扱いになり、技術の安全性、普及性などから有効性の確立された臨床医療ではないという判断をされているのです。
しかし、この法律が作られたのは1999年あたりから2000年初期。つまり、かれこれ20年以上たった今では技術も進歩しているにもかかわらず、この時の法律がいまだに適応されているということになるのです。
特定治療支援事業とは?
特定治療支援事業とは、不妊治療の中でも先ほどご紹介した保険適用外の治療のなかでも特に自己負担額が高額となる体外受精と顕微授精に対して、助成金を支給して支援をするというものです。
対象となるのは、婚姻届けを提出していて法律上夫婦と認められているカップルで、特定不妊治療以外の治療法をうけても妊娠の見込みがないか、又は極めて少ないと医師に診断されていることが必要です。給付額は、1回15万円で1年度目は年3回まで、2年度目以降年2回まで、通算5年、通算10回を超えてはなりません。
また、凍結胚移植及び採卵をしたが卵が得られない等の理由によって、治療を中止したという場合についての支給額は1回7.5万円です。所得制限があり、夫婦で合算して年収730万円がベースとなります。
また、この特定治療支援事業はどこの医療機関で行っても受けられるというものではなく、事業の主体者によって医療機関は指定されています。採卵室・胚移植室、培養室、凍結保存設備、診察室・処置室があることが条件となっており、体外受精を受けられる医療機関のほとんどが特定治療支援事業の指定機関となるはずです。
ご自身が受診する予定の医療機関が、特定治療支援事業に該当されているかどうかを知りたいという場合は、医療機関に直接問い合わせる、もしくは各自治体のホームページや各自治体に問い合わせてみてください。
特定治療支援事業の歴史的背景から助成金の推移を考える
特定治療支援事業は2004年度に創設されました。制度ができる前、2002年頃から、たびたび特定治療支援事業のような不妊治療の助成ができる制度を作りたいということを明言してきました。この発言により、検討がなされ、2004年に制度創設という運びになりました。当初は支援期間が2年間だったのですが、2006年度には支援期間を5年間に延長、翌年には所得制限額を引き上げ、給付金の回数を増やしました。その後も1~2年おきに給付金額を増額させていき、現在に至ります。
つまり、時代の流れや不妊治療を受ける方の増加に伴い、制度はどんどん変わってきています。
そして、2021年よりまた制度が変わろうとしているのです。
今後の不妊治療の助成は?
次に今後の不妊治療の助成について詳しくみていきましょう。
2021年の1月より改正、その内容は?
2021年の1月より助成制度が改正されましたが、この対象となるのは、2021年の1月1日以降に治療を終了されている場合です。つまり、2021年1月1日以降に申請を出されても、それより前に治療を終了されている場合には改正前の内容で、助成金が支給されます。
今回の改正で大きく変わったポイントは3つです。
1つ目は所得制限です。今まで夫婦の合計年収が730万円とされていたものが撤廃されます。ですので、今まで所得制限により受けることができなかったという方でも受けることができるようになります。
2つ目は助成額です。今までは、1回目の治療では30万円、それ以降は15万円までしか支給されませんでしたが、この改正により何回目の治療であっても30万円の助成金が支給されます。
3つ目は助成回数です。今までは1人の女性に対して通算6回までしか支給されませんでしたが改正後は子ども1人に対して6回支給されるようになりました。ですが、40~43歳の方では今までと同様に子ども1人に対して3回までの支給となります。
この改正に至るまで議論がなされてきた女性の年齢制限ですが、これに関しては改正されず、現行通り43歳を支給の上限年齢としています。
不妊治療の助成は市町村で異なることも
不妊治療の助成額は先ほどもお話しした通りなのですが、実は市町村によって金額が上乗せされているところもあります。特に、2021年以降は新型コロナウイルスの影響で出生数が減ってしまった地域もあることからこれを加味して、市町村の予算で金額を上乗せしたり付随してほかのサービスを受けられるところもあるようです。また、こちらに関してもご自身の居住する市町村へお問い合わせください。
2022年には公的医療保険の適用も
政府は2022年4月より不妊治療を公的医療負担の範囲にすることを発表しています。現在は適用外の体外受精や顕微授精などを対象とする方向となっており、それまでは、助成金の活用、それ以降の助成金については、まだ未定となっています。
つまり、助成金については今後どうなっていくかが不透明なので、政府の発表をチェックしていきましょう。
知っておきたい!男性不妊治療助成とは?

ここまでご紹介してきた助成制度は男性、女性どちらかあるいはどちらにも不妊の原因があり、医師が不妊治療以外で子どもをもうけることが難しいと認めた場合のものです。
しかし、男性にも不妊の原因があったことで、体外受精や顕微授精をしなければならないという場合には、特定治療支援事業だけでなく、男性不妊治療助成も受けることができます。
意外と知られていない男性不妊治療助成についても知っておきましょう。
制度の概要と助成について
男性不妊治療助成とは、特定不妊治療に至る過程の一環として行われる精巣内精子生検採取法(TESE)、精巣上体内精子吸引採取法(MESA)、経皮的精巣上体内精子吸引採取法(PESA)、または精巣内精子吸引採取法(TESA)の医療保険適用外となる手術費用と精子凍結料を助成するというものです。
妻の助成の上限回数と同じ分だけ、助成を受けることができます。
この助成金についても特定治療支援事業と同様に2021年の1月より助成金の額が増額されます。治療を受けたのが2020年の12月31日までの場合は1回あたり15万円、2021年の1月1日以降より1回あたり30万円支給されます。
特定治療支援事業と一緒に申請できるの?
男性不妊治療助成の申請も、特定治療支援事業の申請とともに行いましょう。そうすると、治療を受けたのが2020年の12月31日までなら妻の申請している特定治療支援事業の助成金に+15万円、2021年1月1日以降であれば+30万円の支給がされるということです。
ちなみに、妻が以前に凍結した胚を解凍して胚移植を実施した場合には、男性不妊治療助成は非該当となるため、助成金の支給はありません。
まとめ

金銭的負担が高い不妊治療ですが、助成などをうまく活用することで金銭的負担を減らしながら治療を受けることができます。これから不妊治療を考えているという方はぜひ助成制度を活用してみてはいかがでしょうか。
なお、株式会社ChromoS(クロモス)のMicroSort「マイクロソート」を活用した産み分けは、自然妊娠が難しい方は対象外となりますので、ご了承いただければ幸いです。

監修

中林稔
産婦人科医 / 三楽病院産婦人科
日本医科大学卒業。東京大学医学部附属病院で研修後、三井記念病院医長、虎の門病院医長、愛育病院医長を経て、現在三楽病院産婦人科部長。毎日出産や手術に立ち会う傍ら、各地で講演を行い医学的知識や技術の普及に力を入れている。また、少子化及び産婦人科医師不足問題にも積極的に取り組み、教育においても若手医師の育成をはじめ助産師学院の設立等、幅広く活動を行っている。
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