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2021.10.31.MicroSort

【医師監修】精子検査で奇形でも妊娠できる?精子奇形の気になる疑問を一挙解決!

妊娠を成立させるためには卵子だけでなく精子の質もとても重要です。
精子奇形があっても妊娠できる?
精子に奇形があるとどのような影響があるの?
など、気になる疑問をここで解決していきましょう。

精子奇形の正常範囲と異常範囲って?

親子

まずは、精子の奇形について正常と異常の範囲を知っていくことが必要です。精子奇形の正常と異常についてご紹介します。

実は1度の射精で正常な精子は4%以上

精子が奇形かどうかというのは、精液検査の項目の1つである正常形態率という項目で判断します。この正常形態率の正常の値はWHOが設定した世界基準値では正常な精子の割合は4%以上としています。
つまり、1度の射精で正常形態の精子が4%以上あれば問題なく、96%程度の奇形精子が存在しても基準値内と判断されるということなのです。
精子は、頭部・頚部・中片部・尾部・終部という各部位で構成されています。このうち全てに奇形がなかったとしても、いずれかの部分に異常を認めてしまえば、奇形精子となってしまいます。
ちなみに全ての精子が正常な形態である、すなわち正常形態率100%の男性はいないといわれています。

奇形精子の割合は増加傾向

先ほどの4%という値を見て低いと感じられた方もいらっしゃるかもしれませんが、実は4%も正常の精子がいれば良い方とされています。3%であっても不妊には該当しない場合が多いとされている一方で、男性不妊に悩んでいる方の正常形態の精子は1~2%が多いとされてるのです。

ちなみに奇形率が96%を越えてしまう、つまり、正常の精子の割合が3%を下回ってくると奇形精子症と診断されます。

実は奇形精子の割合は年々増加傾向にあります。
WHO(国際保健機関)の調べによると、1999年には奇形の精子の割合は85%だったのですが、2010年には96%と激増しています。この数値をもとに、上述した精子形態率の正常値が設定されたのです。

なぜ、精子の奇形が起こってしまうの?

精子の奇形が起こってしまう原因は不明とされています。
ですが、過度なストレスや不規則な食生活が原因ではないかと考えられています。その理由としては精子そのものが酸化ストレスに弱いからです。
抗酸化作用のあるサプリメントを一定期間服用したことで、精子の奇形率が改善したという研究報告からこの可能性が考えられるようになりました。また、精索静脈瘤であった方がこの病気の治療を行い、精子が熱にさらされなくなったことによって、精子奇形が改善したという報告もあります。

精子奇形によってどのような影響があるの?

運動

精子奇形によって妊娠、そして妊娠をした際に胎児に対して何か影響があるのかについて、詳しく説明します。

1番の影響は不妊になること

精子が奇形であることによる大きな影響は不妊になるということです。不妊の原因は2017年のWHOの調査によると、男性のみに原因がある場合が24%、男女両方に原因がある場合が24%としています。このうち、男性の約90%が今回ご紹介している精子奇形を含む、精子の形状や精子を作る機能などが原因とされています。

精子は先ほどもご紹介したように、頭部・頚部・中片部・尾部・終部という各部位で構成されています。例えば、頭部の形に異常があると前進する力が弱いため、卵子にまでなかなかたどり着くことができません。尾部が短かったり丸まっていたりしていては、泳ぐことができないので、運動率も低くなります。

このように精子に奇形があることで機能的に、卵子にたどり着くことが難しくなり受精に至ることができないので、妊娠率が低くなることが考えられています。

精子が奇形でも胎児が奇形になることはない

奇形という言葉を聞くと多くの方が胎児奇形を連想するようで、産婦人科へ精子奇形率が高いと、「胎児も奇形になるのではないのか?」と相談される方もいらっしゃるようです。
ですが、精子が例え奇形であっても胎児が奇形になることはありません。

その理由は2つあります。
1つは、精子奇形はあくまで精子の形が奇形であるだけであり精子の中に入っているDNAの情報が奇形になっている、という意味ではありません。胎児奇形の原因として、日本産婦人科医会では催奇形性と関連する栄養素の過量摂取、過度な体重増加、妊娠中の感染症への罹患としており、精子の奇形については明言していません。このことから、精子の奇形と無関係であるといわれているのです。
もう1つは、上述したように奇形のある精子が受精をして妊娠を継続させることが難しいという点です。奇形のある精子ではそもそも妊娠に至る可能性が低いため胎児が奇形になることも考えにくいという結論になります。

精子の質はどうすれば改善できる?

精子の奇形について詳しくお分かりいただいたところでどうすれば精子の質が改善されるのかについてをここではご紹介します。

精子奇形率を改善させるための治療はない

精子がなぜ奇形となるのか、原因そのものが不明であるため残念ながら精子の奇形率を改善させるための治療もありません。
ただし、乏精子症や精子無力症、精索静脈瘤、逆行性射精など他の病気の治療をした過程で精子奇形率が改善したというデータもあります。

もしも、精子の奇形率が高いというわけでなく、上記の病気があると診断されている場合には、病気の治療をすることが精子奇形率の改善につながるかもしれません。

日常生活の見直しとストレスを取り除くことが大切

精子奇形の原因については不明とされている一方で、食事やストレス、生活習慣が関係しているのではないかということが分かっています。精子は酸化ストレスに非常に弱いため、抗酸化作用のあるサプリメントを取り入れたり、食事や日常生活を見直すことも重要です。

日常生活でいうと適度な運動や過度な飲酒や喫煙を控えることが必要です。

食生活では、1つの食材を過度に摂るのではなくバランスよくいろいろな食材を摂ることがおすすめです。うなぎやかきなどは亜鉛の補充や抗酸化作用が期待できますが食材で毎日十分量を補うことは難しく、食事のバランスも乱れてしまいます。規則正しい食生活を取りつつ、サプリメントに頼るのもよいでしょう。
ちなみに、ナッツや魚に多く含まれているオメガ-3脂肪酸(DHA+EPA)は、精子形成に良い影響を及ぼすことが分かっているので積極的に食生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
あとはストレスを改善させるためには十分な睡眠をとることも必要です。
どれか1つに特化するのではなく、全体的に満遍なく行うことが精子の質および奇形の改善につながるといえるでしょう。

即効性はないので、妊娠を考えたらすぐに実行!

今周期は妊活を頑張りたいので、精子に良い生活を心がけようと思って上記の生活を取り組まれたとしても、すぐに精子の状態が改善するわけではありません。
精子はまず頭部ができ、頭部の中でDNAが凝縮し続いて、泳ぐために必要な尾部ができ、さらに精子が成熟されてから体外へ射精されていきます。この過程を経て精子が完成するまでに74日~90日程度かかるといわれています。

そのため、今周期に妊娠したいなと思ってその周期のみ頑張っても、精子の形状が改善されるということではありません。
少なくとも3か月前から精子に良い生活を送っていくことが必要であるといえるのです。

まとめ

親子

精子の奇形の原因は分かっておらず、奇形そのものの改善は何かしらの病気を合併していなければ治療をして改善していくことはできません。
また精子の形成には時間もかかるため、すぐに精子の質を高めるということもできません。
妊娠を考えた場合には早めに精子の質を改善できるよう日常生活の見直しに取り組んでいきましょう。

監修

一倉絵莉子

一倉絵莉子

産婦人科医 / 六本木ヒルズクリニック

日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会会員
日本大学医学部卒業。川口市立医療センター、北里大学メディカルセンター産婦人科等に勤務。

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