【医師監修】産み分けコラム COLUMNS
【医師監修】セルフシリンジ法と人工授精はどう違う?妊娠確率の差は?
セルフシリンジ法をご存じですか?
あらかじめ採取した精液をご自分で膣内に注入する方法で、海外では非常にポピュラーな妊活方法です。精液を注入するといえば人工授精も同じですが、この2つには違いがあるのでしょうか。
今回はセルフシリンジ法と人工授精それぞれの特徴をご紹介しつつ、その違いについて解説していきます。
セルフシリンジ法と人工授精は同じもの?

セルフシリンジ法と人工授精は、どちらも「あらかじめ採取しておいた精液を膣に注入する手法」です。一見似てはいますが、大きく異なる点があります。違いをご紹介する前に、まずはそれぞれの手法を解説しましょう。
セルフシリンジ法
専用の滅菌器具を使い、ご自宅で精液を注入する方法です。セルフシリンジのキットは、インターネットで手軽に購入できます。
採取した精液を付属カップにとり、シリンジ(針のない注射器のようなもの)で吸い上げます。シャフト(挿入部)を装着して膣に挿入し、精液を押し入れます。シャフトは細くなめらかな形状です。シャフトは子宮に入らないよう設計されているため、一般の方でも安全に使うことができます。
人工授精
人工授精は不妊専門クリニックでおこなわれる手法で、不妊治療のステップのひとつです。タイミング法と体外受精の中間のような位置づけになります。
人工授精では、採取した精液に含まれる余分なもの(雑菌など)を除去します。さらに精子を濃縮したり、遠心分離にかけて元気な精子を抽出したりします。精液は、樹脂製などのやわらかいカテーテルを使い、子宮内に注入します。一瞬なので痛みはあまりありません。一連の手順はクリニック内でおこなわれます。
セルフシリンジ法と人工授精の違い

ここからはセルフシリンジ法と人工授精の違いについて解説します。2つの間で大きく違うのは、精子の取り扱いです。
「精子をサポートするかどうか」が違う
セルフシリンジ法と人工授精を見比べると、2つの大きな違いがあります。
・精子を調整するかしないか
・注入する場所が膣か子宮か
人工授精は、精子の問題をクリアすることが目的です。「精子が少ない」「子宮に到達できない」、こうした精子由来の問題をサポートするために、人工的に元気な精子を抽出・濃縮して子宮まで送り届けてあげるのです。
セルフシリンジ法はこのような精子へのケアがありません。そのままの精子を使うため、より自然妊娠に近いといえます。
セルフシリンジ法と人工授精の比較
精子のサポート以外に、施術をおこなう場所や費用も大きく異なります。人工授精では通院が必須なのに対し、セルフシリンジ法は自宅などリラックスできる場所でおこなえます。

費用に関しては、セルフシリンジ法は10回キットで5,000円ほど、1回あたりに換算すると500円程度です。人工授精は1回あたり20,000円ですが、その前に不妊基本検査やタイミング法指導などを受けるため、その分費用がかかります。
人工授精のほうが費用がかかりますが、精子をサポートすることができます。逆に精子が元気で数も問題なければ、人工授精を受けるメリットは少ないでしょう。また卵子の質の低下や卵管に通過障害がある場合はいずれの方法でも妊娠することは難しい場合があります。大まかなとらえ方としては、以下の通りです。
・性交に問題がある場合はセルフシリンジ法
・精子に問題がある場合は人工授精
卵管や精子に問題がなくても、「夫婦のタイミングがうまくいかない」「精神的なプレッシャーでセックスがつらい」など性交の部分で問題を抱えるご夫婦は多くいらっしゃいます。こうした場合はセルフシリンジ法で一定期間試すメリットは大いにあります。ひとまず不妊検査を受け、その結果を見て判断するのもよいでしょう。
妊娠確率の違いは?
セルフシリンジ法と人工授精とで、妊娠確率に違いはあるのでしょうか。セルフシリンジ法の妊娠確率は「自然妊娠と同等程度」といわれています。自然妊娠の確率は、1周期で20~30%ほどです。人工授精はというと、1回で約10~15%の妊娠確率です。
ただし、これは単純に比較ができません。セルフシリンジ法の確率は1周期で数回トライした結果が含まれるのに対し、人工授精は1回の施術あたりの確率です。また、セルフシリンジ法が広く妊活している方を対象にしているのに対し、人工授精は不妊治療に通うご夫婦が主体になっています。
採精のポイント
セルフシリンジ法と人工授精は、あらかじめ精子を採取する部分は同じです。ここでは採精時のポイントについてご紹介しましょう。気をつけたいのは次の3つです。
・ストレスや疲労をためない
・睡眠を十分にとる
・できるだけ禁煙する
・アルコールはほどほどに
・精液の出しすぎ・貯めすぎに注意
精液は出しすぎると精子が減ってしまいます。貯めすぎても死んだ精子が混入して質が悪くなるので、採精の4~5日前に1回射精しておくくらいがよいでしょう。
セルフシリンジ法や人工授精での産み分けは可能?
セルフシリンジ法や人工授精を活用して、男女の産み分けにトライすることは可能なのでしょうか?記事の最後に、それぞれの産み分けの工夫について触れていきます。
セルフシリンジ法
「女の子が欲しいなら浅めの位置で射精、男の子なら奥で射精」という話を聞いたことがないでしょうか。これは1960年代にシェトルズ博士が発表した「シェトルズ法」が根拠になっています。
膣内は酸性環境に保たれていますが、Y精子(男の子)は酸性環境に弱いため、通過する距離が長いほど死滅しやすくなります。逆にX精子(女の子)は酸性に強いため、距離が長いほど有利なのです。
これを応用し、セルフシリンジ法をおこなうときは女の子なら浅めの位置で、男の子なら深い位置で注入するのがよいといわれています。
ちなみに、排卵日当日なら男の子、排卵日2日前なら女の子を妊娠しやすいとされているので、タイミングも合わせていくとよいでしょう。ただしシェトルズ法による産み分けは、成功率があまり高くないのが現状です。
人工授精
一部のクリニックでは、人工授精の際に産み分け目的でパーコール法が用いられます。パーコール法とは、特殊な薬剤(パーコール液)を使い、X精子(女の子)だけを取り出す方法です。
産み分け精度としてはおよそ50~60%とされ、自然妊娠でも約50%の確率であることを考えるとこれも高いとはいえません。
MicroSort「マイクロソート」の活用
高精度の産み分け法に、株式会社ChoromoS(クロモス)のMicroSort「マイクロソート」というプログラムがあります。
採取した精液を凍結輸送で海外研究機関に送り、希望の性別の精子だけを抽出して返送するシステムです。産み分け精度は1500件以上の追跡調査で女児93%・男児82%をマークしています。
MicroSort「マイクロソート」を受けた精子はセルフシリンジ法で注入します。クリニックでの受け取りが可能であれば、人工授精や体外受精の精子としてもご利用可能です。
まとめ

今回はセルフシリンジ法と人工授精の違いについて解説しました。不妊検査で精子に問題がなければ、コストや手間がかからないセルフシリンジ法のメリットは大いにあります。
産み分けを検討される場合は、高精度産み分けプログラムMicroSort「マイクロソート」がお役に立てるかもしれません。資料は公式サイトより無料でお取り寄せいただけます。ファミリーバランシングの一助として、検討されてみてはいかがでしょうか。

監修

一倉絵莉子
産婦人科医 / 六本木ヒルズクリニック
日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会会員
日本大学医学部卒業。川口市立医療センター、北里大学メディカルセンター産婦人科等に勤務。
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